天皇の退位等に関する皇室典範特例法
■成立
平成29年6月9日
■施行
平成29年6月16日
天皇の退位等に関する皇室典範特例法の概要
この法律は、
① 天皇陛下が、昭和64年1月7日の御即位以来28年を超える長期にわたり、国事行為のほか、全国各地への御訪問、被災地のお見舞いをはじめとする象徴としての公的な御活動に精励してこられた中、83歳と御高齢になられ、今後これらの御活動を天皇として自ら続けられることが困難となることを深く案じておられること
② これに対し、国民は、御高齢に至るまでこれらの御活動に精励されている天皇陛下を深く敬愛し、この天皇陛下のお気持ちを理解し、これに共感していること
③ さらに、皇嗣である皇太子殿下は、57歳となられ、これまで国事行為の臨時代行等の御公務に長期にわたり精勤されておられること
という現下の状況に鑑み、皇室典範第4条の特例として、天皇陛下の退位及び皇嗣の即位を実現するとともに、天皇陛下の退位後の地位その他の退位に伴い必要となる事項を定めるものとする(第1条)
1.天皇の退位及び皇嗣の即位
天皇は、この法律の施行の日限り、退位し、皇嗣が、直ちに即位するものとする(第2条)
2.上皇及び上皇后
- (1)上皇(第3条)
① 退位した天皇は、上皇とするものとする(第1項)
② 上皇の敬称は陛下とするとともに、上皇の身分に関する事項の登録、喪儀及び陵墓については、天皇の例によるものとする(第2項・第3項)③ 上皇に関しては、②の事項のほか、皇位継承資格及び皇室会議の議員資格に関する事項を除き、皇室典範に定める事項については、皇族の例によるものとする(第4項) - (2)上皇后(第4条)
① 上皇の后は、上皇后とするものとする(第1項)
② 上皇后に関しては、皇室典範に定める事項については、皇太后の例によるものとする(第2項) - (3)他法令の適用・事務をつかさどる組織(附則第4条・附則第5条・附則第11条)
- 上皇及び上皇后の日常の費用等には内廷費を充てること等(附則第4条・附則第5条)とし、上皇に関する事務を遂行するため、宮内庁に、上皇職並びに上皇侍従長及び上皇侍従次長(特別職)を置くものとする(附則第11条)
3.皇位継承後の皇嗣
- ① この法律による皇位の継承に伴い皇嗣となった皇族に関しては、皇室典範に定める事項については、皇太子の例によるものとする(第5条)
- ② ①の皇嗣となった皇族の皇族費は定額の3倍に増額すること等(附則第6条)とし、①の皇嗣となった皇族に関する事務を遂行するため、宮内庁に、皇嗣職及び皇嗣職大夫(特別職)を置くものとする(附則第11条)
4.皇室典範の一部改正
皇室典範附則に「この法律の特例として天皇の退位について定める天皇の退位等に関する皇室典範特例法は、この法律と一体を成すものである」との規定を新設するものとする(附則第3条)
5.その他
- (1)贈与税の非課税等(附則第7条)
この法律による皇位の継承があった場合において皇室経済法第7条の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物については、贈与税を課さないものとする - (2)意見公募手続等の適用除外(附則第8条)
- この法律による皇位の継承に伴い元号を改める政令等を定める行為については、行政手続法第6章の規定は、適用しないものとする
- (3)国民の祝日に関する法律の一部改正(附則第10条)
国民の祝日である天皇誕生日を「12月23日」から「2月23日」に改めるものとする
6.施行期日・失効規定
- ① この法律は、一部の規定を除き、公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとする。当該政令を定めるに当たっては、内閣総理大臣は、あらかじめ、皇室会議の意見を聴かなければならないものとする(附則第1条)
- ② この法律は、この法律の施行の日以前に皇室典範第4条の規定による皇位の継承があったときは、その効力を失うものとする(附則第2条)
参考
皇室典範(昭和22年法律第3号)
第4条 天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する。