台風

熱帯低気圧 分類と名称|各国気象機関ごとの分類と名称

熱帯低気圧

1985年から2005年までに発生した熱帯低気圧の全経路:tracks of all Tropical cyclones which formed worldwide from 1985 to 2005(by Nilfanion)

 

熱帯低気圧の分類

国際的には、すべての熱帯低気圧は、その域内の最大風速に基づく強度によって大まかに、

・トロピカル・デプレッション(弱い熱帯低気圧とも)
・トロピカル・ストーム(熱帯暴風とも)
・及び地域ごとに異なる呼び名で呼ばれる発達した熱帯低気圧

の3つに分類される。

地域ごとの呼び名の代表的な例として、北西太平洋域では熱帯低気圧がビューフォート風力階級で風力8以上に発達すると、台風と呼ばれるようになる。

台風とタイフーンは、いずれも typhoon と英訳されるが、厳密には、最大風速が風力8以上の熱帯低気圧が「台風」に分類され、風力12に達した熱帯低気圧のみが「タイフーン」に分類されるように、それぞれ定義が異なる(下表参照)。

北東太平洋域または北大西洋域で熱帯低気圧がタイフーンと同等の勢力に達すれば、ハリケーンと呼ばれる。

南半球およびインド洋においては、ハリケーンやタイフーンという呼称は使用されず、この海域で熱帯の性質をもつ低気圧は、日本ではサイクロンと総称される。

台風の発生と熱帯低気圧|台風関連の用語・基礎知識

 

 

熱帯低気圧の標準的分類

英文における呼称(国際標準)※1 最大風速※2 風力 和文における呼称(日本国内標準)※3
分類 略号 m/s kt 分類
Tropical Depression TD 17.2未満 33以下 7以下 熱帯低気圧※4
Tropical Storm TS 17.2–24.4 34–47 8–9 台風※5
Severe Tropical Storm STS 24.5–32.6 48–63 10–11
Typhoon/Hurricane/Cyclone T/H/C 32.7以上 64以上 12

※1
世界気象機関『台風委員会運用指針』 CHAPTER 4 – TROPICAL CYCLONE WARNINGS AND ADVISORIES 4.2 Classification of tropical cyclones及び別資料を参考に作成。

※2
ここでは、10分間の平均風速の最大値を基準に用いる。

※3
『気象官署予報業務規則』第78条の定義による。

※4
この「熱帯低気圧」は、総称としての熱帯低気圧 (Tropical Cyclone) のうち、台風の強度に達しないものを指す用語である。

※5
東経180度以東の北太平洋で発生するものは「発達した熱帯低気圧」と呼ばれる。

 

このように日本語においては、台風以外の熱帯低気圧はその強度に関係なく、すべて単に「熱帯低気圧」と呼称される。

以前、気象庁は、トロピカル・デプレッションと同等の強度の熱帯低気圧を「弱い熱帯低気圧」と呼称して区別していたが、1999年の玄倉川水難事故の際にこの表現は災害が起こらないかのような誤解を招くとの指摘を受けたことがきっかけとなって、2000年6月1日以降は防災上の配慮からこの表現を使用しないことにしている。

太平洋域においては、太平洋北中部で発生したハリケーンが日付変更線および180度経線を西に横断して北西太平洋域に入ると、台風となる(例:台風17号 ハリケーンが経度180度線を越え気象庁の観測対象に 越境は3年ぶり 国際名ヘクター)。

逆に台風が東進してハリケーンと呼ばれるようになることも稀にある。

また、合同台風警報センターは、1分間の平均風速の最大値が67m/sを超える台風を Super Typhoons (スーパー台風)と呼び分けている。

さらに、前記の表に示した標準的な呼称に加えて、各海域で熱帯低気圧の観測を担当する気象機関ごとに異なる用語体系(下表参照)が使われており、異なる海域間で熱帯低気圧を相互に比較することは困難になっている。

 

 

気象機関ごとの熱帯低気圧の分類

風力階級 1分間平均
最大風速
(NHC/CPHC/JTWC)
10分間平均
最大風速
(WMO/JMA/MF/BOM/FMS)
北東太平洋
及び北大西洋
NHC/CPHC
北西太平洋
JTWC
北西太平洋
JMA
北インド洋
IMD
南西インド洋
MF
豪州周辺
及び南太平洋
BOM/FMS
0–7 <32ノット (16 m/s) <28ノット (14 m/s) トロピカル・デプレッション トロピカル・デプレッション トロピカル・デプレッション デプレッション ゾーン・オブ・ディスターブド・ウェザー トロピカル・ディスターバンス
トロピカル・デプレッション
トロピカル・ロー
7 33ノット (17 m/s) 28–29ノット (14–15 m/s) ディープ・デプレッション トロピカル・ディスターバンス
8 34–37ノット (17–19 m/s) 30–33ノット (15–17 m/s) トロピカル・ストーム トロピカル・ストーム トロピカル・デプレッション
9–10 38–54ノット (20–28 m/s) 34–47ノット (17–24 m/s) トロピカル・ストーム サイクロニック・ストーム モデレート・トロピカル・ストーム カテゴリー1
トロピカル・サイクロン
11 55–63ノット (28–32 m/s) 48–55ノット (25–28 m/s) シビア・トロピカル・ストーム シビア・サイクロニック・ストーム シビア・トロピカル・ストーム カテゴリー2
トロピカル・サイクロン
12+ 64–71ノット (33–37 m/s) 56–63ノット (29–32 m/s) カテゴリー1
ハリケーン
タイフーン
72–82ノット (37–42 m/s) 64–72ノット (33–37 m/s) タイフーン ベリー・シビア・サイクロニック・ストーム トロピカル・サイクロン カテゴリー3
シビア・トロピカル・サイクロン
83–95ノット (43–49 m/s) 73–83ノット (38–43 m/s) カテゴリー2
ハリケーン
96–97ノット (49–50 m/s) 84–85ノット (43–44 m/s) カテゴリー3
メジャー・ハリケーン
98–112ノット (50–58 m/s) 86–98ノット (44–50 m/s) エクストリームリー・シビア・サイクロニック・ストーム インテンス・トロピカル・サイクロン カテゴリー4
シビア・トロピカル・サイクロン
113–122ノット (58–63 m/s) 99–107ノット (51–55 m/s) カテゴリー4
メジャー・ハリケーン
123–129ノット (63–66 m/s) 108–113ノット (56–58 m/s) カテゴリー5
シビア・トロピカル・サイクロン
130–136ノット (67–70 m/s) 114–119ノット (59–61 m/s) スーパー・タイフーン スーパー・サイクロニック・ストーム ベリー・インテンス・トロピカル・サイクロン
>137ノット (70 m/s) >120ノット (62 m/s) カテゴリー5
メジャー・ハリケーン

 

 

米ハリケーン・センター(NHC)・中部太平洋ハリケーン・センター(CPHC)・合同台風警報センター(JTWC)における熱帯低気圧の分類

※1ノット(kt) = 0.51 m/s

太平洋北西部

スーパー・タイフーン Super Typhoon (最大風速 128ノット以上)
タイフーン Typhoon (最大風速 64~127ノット)
トロピカル・ストーム Tropical Storm (最大風速 34~63ノット)
トロピカル・デプレッション Tropical Depression (最大風速 34ノット未満)

 

太平洋北中部・太平洋北東部・大西洋北部

ハリケーン Hurricane (最大風速 64ノット以上)
トロピカル・ストーム Tropical Storm (最大風速 34~63ノット)
トロピカル・デプレッション Tropical Depression (最大風速 34ノット未満)

 

インド洋・太平洋南部

トロピカル・サイクロン Tropical Cyclone

日本が含まれる太平洋北西部では、この地域を担当する地域センターである気象庁の太平洋台風センター(RSMC Tokyo – Typhoon Center)により、最大風速(この場合は10分間平均風速の最大値)が17.2m/s(34ノット)以上になった熱帯低気圧が、正式に「台風」と定義されている。

 

 

熱帯低気圧番号

米国などで用いられている熱帯低気圧の識別記号。

地域ごとに各年(南半球では7月~6月を1区切りとする)に発生した熱帯低気圧は順番に「記号」が割り当てられる。

熱帯低気圧が消滅しないまま他地域に移動した場合でも、「記号」は変更されない。

W :太平洋北西部(日付変更線以西)
C :太平洋北中部(日付変更線~西経140度)
E :太平洋北東部(西経140度以東)
L :大西洋北部
A , B :インド洋北部
S , P :インド洋南部および太平洋南部

 

NHC・NOAA

JTWC(Joint Typhoon Warning Center)

気象庁

 

  • 著者/Author

-台風