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愛子さま日赤へご就職 宮内記者会の質問とご回答全文

愛子さま日赤へご就職 宮内記者会の質問とご回答全文

天皇皇后両陛下の長女の愛子内親王殿下(愛子さま)は、令和6年4月1日、日本赤十字社に入社されました。ご就職に際し、宮内記者会の質問に文書で回答を寄せられました。

愛子さま 日赤への就職を選ばれた理由などをご回答

問1 卒業後の進路として、進学などではなく就職を選ばれました。社会へ出ることを選択し、その上で日本赤十字社を選ばれた理由とともに、両陛下からそれぞれかけられたお言葉があればご紹介ください。日赤では、どのような活動に携わりたいとお考えでしょうか。

私は、天皇皇后両陛下や上皇上皇后両陛下を始め、皇室の皆様が、国民に寄り添われながら御公務に取り組んでいらっしゃるお姿をこれまでおそばで拝見しながら、皇室の役目の基本は「国民と苦楽を共にしながら務めを果たす」ことであり、それはすなわち「困難な道を歩まれている方々に心を寄せる」ことでもあると認識するに至りました。

そのような中で、ボランティア活動を始め、福祉活動全般に徐々に興味を抱くようになりました。特にボランティア活動に関心を持つようになったのは、一昨年の成年を迎えての会見でも述べましたように、災害の被災地に赴き、厳しい環境の中でも懸命に活動を続けるボランティアの方々の姿をニュースなどで目にして胸を打たれたことや、中学・高校時代からの親しい友人が、東日本大震災の復興支援にボランティアとして携わってきており、その友人から活動の様子を聞いたことなどが大きなきっかけとなったように思います。

大学では福祉に関する授業を履修し、福祉活動への関心が増す中で、公務以外でも、様々な困難を抱えている方の力になれる仕事ができればと考えるようになり、大学卒業後は社会に出て、福祉関係の仕事に就きたいという思いを抱くようになりました。

そのような時期に、両陛下と御一緒に、日本赤十字社からの御進講を受ける機会を頂き、また、関東大震災から100年の節目に日赤本社にて開催された企画展を見に伺うこともできました。展示や説明を通して、国内外の災害救護活動や人道危機に対する救援活動、社会福祉事業を始め、多種多様な日赤の活動について理解を深めると同時に、同社の社会における役割の大きさを実感いたしました。そのことから、社会に直接的に貢献できる日赤の活動に魅力を感じ、両親に相談いたしましたところ、社会のお役に立てるとても良いお仕事なのではないかと背中を押していただき、日赤でお勤めすることを希望いたしました。有り難いことに、日赤側にも御快諾いただき、本年4月より勤務させていただく運びとなりました。

日赤では嘱託職員として勤務することになりますが、元々関心のあったボランティアに関する業務を始め、赤十字の活動に幅広く触れ、新たなことにも挑戦しつつ、様々な経験ができれば嬉(うれ)しく思います。

初めて取り組むことも多いと思いますが、職場の方々に御指導を頂きながら、社会人としての責任感を持って、様々なことを身に付け、なるべく早くお役に立てるようになるよう精進したいと考えております。

 

問2 卒業後は皇族としての活動に臨まれる機会も増えるかと思います。成年皇族としてこれまでに、新年行事や外国賓客の接遇などに臨まれた感想や、お仕事と両立しながら取り組まれることになる今後の活動への抱負をお聞かせください。

これまでは学業の状況を見ながら、皇族として幾つかの行事に出席させていただきました。その際には、天皇皇后両陛下や上皇上皇后両陛下を始め、皇室の皆様のなさりようをお手本とさせていただき、所作などで分からない点があれば、事前に両陛下や他の皇族方に伺い、アドバイスを頂きながら取り組んでまいりました。

新年行事や宮中午餐(さん)など、以前は両親から話を伺ったり、ニュースで間接的に拝見したりするだけであった行事に自分が参加しているということに、成年皇族としての実感が湧くと同時に、誠意を持って臨まなければならないという気持ちを持つようになりました。

2月には、初めて宮中午餐(さん)に出席させていただきました。外国の賓客の方とお食事の席を御一緒することには、始まる前は緊張もありましたが、お客様が気さくに話し掛けてくださり、和やかな雰囲気の中で、お互いの国の気候や食文化などについてお話しできたことが心に残りました。そして、このような場は、相手の方の国の風土や文化について理解を深めることができる貴重な機会であるとともに、日本の魅力を外国に発信できる、両国にとって意義深い時間であると身をもって感じました。

また、先日は、大学卒業に伴って、神宮と神武天皇山陵を参拝いたしました。初めての一人での地方訪問でしたので、無事に参拝を終えることができたことに安堵(ど)いたしました。それと同時に、行った先々で多くの方々に温かく迎えていただいたことに感激し、非常に印象深い訪問となったことを心から有り難く思いました。

今後は、公的な活動に出席する機会が今までよりも増えることになるかと思います。公務と仕事の両立には大変な面もあるかもしれませんが、これまで18年間という長い年月を学習院の温かい環境で過ごさせていただいたことに感謝し、その中で得た学びも活かしつつ、多様な活動に携わることができれば有り難く思います。これからも周囲の方々の理解と助けを頂きながら、それぞれのお務めに誠心誠意取り組んでいきたいと考えております。

 

問3 ご成年の記者会見ではご自身の結婚について「まだ先のこと」と述べられていましたが、理想とする時期やパートナー像、結婚観について現在のお考えとともに、両陛下からのご助言があればお聞かせください。これまでに心を動かされる出会いはありましたか。

成年の会見から2年が経過いたしましたが、結婚への意識はその頃と変わっておりません。一緒にいてお互いが笑顔になれるような関係が理想的ではないかと考えております。

両親から具体的なアドバイスを頂いたことは特にございませんが、両親のようにお互いを思いやれる関係性は素敵だなと感じます。

心を動かされる出会いというと大袈裟(げさ)に聞こえるかもしれませんが、私にとっては、これまでの出会い全てが心を豊かにしてくれたかけがえのない宝物であり、深く感謝しております。これからも様々な出会いに喜びを感じつつ、一つ一つの出会いを大切にしていきたいと思います。

 

問4 天皇陛下のご即位から間もなく5年となりますが、安定的な皇位継承を巡る議論は進んでいません。皇族数が減り、公務の担い手が先細ることについて、内親王としてどのように受け止め、皇室の将来やご自身の役割をどのようにお考えでしょうか。

公務に携わることのできる皇族の数は、以前に比べて少なくなってきていると承知しておりますが、制度に関わる事柄につきましては、私から発言することは控えさせていただければと思います。私自身は、そのような中で、一つ一つのお務めに丁寧に向き合い、天皇皇后両陛下や他の皇族方をお助けしていくことができればと考えております。

 

愛子内親王殿下の学習院大学ご卒業に際しての宮内記者会質問とご回答

問 大学卒業を迎えられる現在の心境はいかがでしょうか。4年間の大学生活を振り返り、特に印象に残った出来事やご友人との思い出、卒業論文の内容や執筆で苦労された点などをご紹介ください。将来的な海外留学や、大学院進学の希望はお持ちでしょうか。

回答に先立ちまして、今年1月1日に発生した能登半島地震で多くの方が亡くなり、また、被災され、今も9千人を超える方が避難を余儀なくされていることに胸が痛みます。亡くなられた方々に深く哀悼の意を表し、御遺族と被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。寒さも厳しい中、被災された皆様の御苦労はいかばかりかと思います。大変なことも多いと思いますが、今後、一日も早く平穏な日常が戻り、復旧・復興が進んでいくことを切に願っています。

この度、学習院大学文学部日本語日本文学科を卒業するに当たり、まず、お世話になりました先生方や職員の皆様を始め、大学関係者の方々、日頃から温かく接してくれた友人、そして、大学生活をそばで支え、見守って下さった天皇皇后両陛下に、心からの感謝をお伝えしたいと思います。

4年間の大学生活を振り返ってみますと、中学や高校の3年間かそれ以上にあっという間だったように感じられる一方で、一日一日は非常に濃く、学びの多い日々であったことを感じます。

思い返せば、新型コロナウイルス感染症のまん延と同時期に始まった大学生活でした。経験したことのないオンライン授業、インターネット上での課題の授受など、最初は操作も分からず、不慣れな手つきで恐る恐る画面を開き、授業を受講していたことを懐かしく思い出します。先生方や学校関係者の方々にとっても、初めての試みで苦労されることも多く、試行錯誤の毎日であったことと思いますが、皆様の御尽力によって、自宅で授業が受けられる環境を整えていただいたことは、とても有り難いことでした。

感染症の流行が徐々に落ち着いてきた中で、4年生からは大学のキャンパスに足を運べるようになりました。キャンパスでの学生生活では、先生やほかの学生さんたちと、教室で同じ空間や同じ時間を共有しながら授業を受けることや、授業で出された課題に取り組むべく、休み時間に図書館や研究室に調べ物に行くこと、そしてまた、友人たちと対面で交流することができるようになりました。その転換期を経験し、以前は当たり前であったこれらのことがいかに尊いものであるのか、実感することとなった学生生活でもありました。

高校までの友人たちとのうれしい再会とともに、大学入学後の新たな友人たちとの交流も始まり、学年の枠を越え、友人たちと一緒に授業を受けたり、じかに話をして笑い合ったり、学内の様々な場所を訪れたりしたことは、私にとって忘れることのできない一生の思い出となりました。

また、中世の和歌の授業を履修する中で、和歌の美しさや解釈の多様さに感銘を受けたことから、大学における学業の集大成として書き上げた卒業論文では、中世を代表する女流歌人の一人であった式子しょくし内親王とその和歌を扱い、「式子しょくし内親王とその和歌の研究」という題で執筆を致しました。

調べる資料や範囲が膨大で、一つのことを調べていると、次から次へと調べなければならない事柄が出てきてなかなか終わらず、特に締切りが近づいた昨年末は、気が遠くなるような毎日を過ごしておりました。また、作成する文章の量が、授業で課される普段のレポートに比べてはるかに多かったため、ちゅうを付ける作業など、論文としての体裁を整えることにも時間を要しましたが、指導教授の先生からのアドバイスと心強い励ましのお言葉、研究室の皆様の温かいサポートを頂き、無事に提出できた時には、ほっとした気持ちと同時に大きな達成感がありました。御指導頂いた先生方を始め、関係していただいた皆様に深く感謝しております。

将来の勉学については、現在のところ具体的には考えておりませんが、来月より日本赤十字社の嘱託職員として勤務させていただくことになりましたので、皇族としての務めを果たしながら、社会人としての自覚と責任を持って、少しでも社会のお役に立てるよう、公務と仕事の両立に努めていきたいと思っております。

 

報道動画

【ノーカット版】愛子さま 日本赤十字社に入社 社会人としての抱負(2024年4月1日)

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