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15万人超の旅行者を帰国させるマッターホルン作戦 英旅行代理店が破産

 

創業178年 世界最初の旅行代理店が破産申請

創業178年の英旅行代理店トーマス・クック・グループは23日、ロンドンの裁判所に破産を申請した。追加の資金調達交渉が合意に達しなかったため。英民間航空局(CAA)は、同社が「直ちに営業を停止した」と発表した。トーマス・クック・グループは、「近代ツーリズムの祖」とも言われる実業家トーマス・クックが19世紀に創業した老舗旅行代理店が母体だった。

破産申請時 同社のツアーで15万人以上が海外を旅行

これによって、同社のツアーでイギリスから国外を旅行している15万人以上を無事に帰国させるため、平時で最大規模の帰還作戦「マッターホルン作戦」が開始された。イギリス人観光客を帰国させるため、22日からすでに乗客のいない旅客機がイギリスから海外へ向けて相次ぎ出発していた。

英政府は、政府とCAAが数十のチャーター機を調達したため、トーマス・クックに手配して海外に出国している旅行者は全員、無料で帰国させると発表した。

「マッターホルン作戦」では、政府が確保したチャーター機45機が23日だけで64航路を移動する。その本数から、現時点で一時的にイギリス最大の航空集団ということになる。イージージェットやヴァージン航空などが、旅客機を提供したという。

BBCのトム・バリッジ交通担当編集委員は、23日にも1万6000人の旅行客が海外から帰国する予定だったと伝えている。政府はそのうち少なくとも1万4000人をチャーター機で23日中に帰国させたい考え。

CAAは、「トーマス・クックを通じた全ての予約は、フライトも海外旅行も含めて全て、キャンセルされた」と発表。「これほど長い歴史を持つ会社が営業を停止するのは、利用客や従業員にとって大変気がかりなことに違いなく、影響を受ける全ての人のことを思っている」と述べた。

トーマス・クックを通じて海外旅行を手配し、今から2週間の間に帰国する予定の旅行者は全員、帰国日に「できるだけ近い」日程で帰国できるよう手配するという。そのための帰国便は23日から運航開始の予定で、専用のウエブサイトが整い次第、詳細はそこに掲載される見通し。

CAAはさらに、トーマス・クックのパックツアーが宿泊するホテルに対して、宿泊費用は政府が航空旅行信託基金(ATOL)の保証を使って負担すると連絡していると説明した。イギリスでは欧州連合(EU)のパッケージ旅行者保護方針にもとづき、パック旅行利用者の宿泊費と帰国費用は業界の弁済保証金からなるATOLの保証対象となる。

グラント・シャップス英運輸相は、「スタッフと旅行者にとってとても残念な知らせだ」と述べ、大勢を帰国させるため「大掛かりな」作業に取り組むなか、旅行者には「スタッフに思いやりをもって」接してもらいたいと促した。

破産による雇用への影響は世界で2万2千人

トーマス・クックの破綻によって、イギリス国内9000人を含む世界2万2000人の雇用に影響が出る。

ピーター・フランクハウザー最高経営責任者(CEO)は、経営破綻について「とてつもなく残念だ」とコメントし、「数百万人もの利用客、数万人の従業員」に謝罪した。

同社は今年8月、最大株主の中国投資会社、復星国際(フォースン・グループ)から救済資金9億ポンドを獲得していたものの、先週になって大手株主や主要取引先銀行が信用条件として追加で2億ポンドの資金調達を要求していると明らかにしていた。22日まで救済交渉を重ねていたが、成立せず、破産申請に至った。

同社は政府にも資金援助を求めており、最大野党・労働党や労働組合はこれに応じるよう政府に働きかけている。

しかし、ドミニク・ラーブ英外相は22日、BBCに対して、「よほどの国家利益」が伴わない限り、企業が破綻したからといって政府が「当然のように支援する」というものではないと話していた。

BBCの取材では、トーマス・クックは政府に2億5000万ドルの資金援助を要請していたが、政府はそれだけの公的資金を注入しても同社は数週間しかもたないと判断したという。

ボリス・ジョンソン英首相は、旅行先で立ち往生するイギリス市民を支援する方針を打ち出したが、同時に「こういう問題をなんとかする意志」が同社重役陣にはなかったのか疑問視した。

トーマス・クック社は業績悪化について、トルコなどイギリス人に人気の海外旅行先で政情不安が続いたり、今年の夏に熱波が続いたりしたこと、あるいはブレグジット(イギリスのEU離脱)に伴う不透明感から海外旅行を控える傾向が続いたことなどを理由に挙げている。

その一方で、同社はオンラインの旅行代理店や格安航空会社などから激しい競争にさらされていた。

さらに最近では、多くの旅行者が代理店に頼らず、自前で旅行を計画するようになったことも影響しているとみられる。

インターネット時代への移行に失敗

英紙インディペンデントの旅行業界担当、サイモン・コルダー氏は、英マンチェスター空港からBBCニュースの取材に応じ、トーマス・クック社には「21世紀に対応する用意ができていなかった」と話した。

「今では誰でも旅行代理店のふりができる。すべての航空券、世界中のホテルのベッドやレンタカーを自分で探して、自分で手配できる」ことが、同社の業績悪化につながったとの見方を示した。

コルダー氏によると、マンチェスター空港では日付が23日に変わると共に、トーマス・クック航空の旅客機の押収が始まったという。(BBC:Thomas Cook collapses as last-ditch rescue talks fail

 

 

Thomas Cook Group

トーマス・クック・グループ (英: Thomas Cook Group plc.) は、イギリスの旅行代理店グループ。

近代的な意味での世界最初の旅行代理店とされる。その後、所有権は変遷しているが、現在、グループの実質的な本部は、ロンドンに置かれている。また、トーマス・クック単体(英: Thomas Cook Retail Ltd)の登記上の本店所在地は、ピーターバラに置かれている。

2010年代に入ると経営が悪化し、2019年9月23日、ロンドンの裁判所に破産申請を行った。

中世にはヴェネツィア共和国などの商人などが聖地巡礼旅行の斡旋を行っていた。旅行客のためにホテルや交通機関の予約代行や団体列車の運行をおこなったのは、19世紀のトーマス・クックが初めてである。それまでは、旅行者が各自で切符などの手配などを行わなければならなかった。

設立者のトーマス・クックはプロテスタントの一派であるバプティスト派の伝道師で、禁酒運動に打ち込んでいた。1841年に開催された禁酒運動の大会に、信徒を数多く送り込むため、列車の切符の一括手配を考えだし、当時高価だった鉄道を割安料金で乗れるようにした。これをきっかけに一般の団体旅行を扱い始めた。

1855年からは、イギリスからヨーロッパ諸国への団体旅行も扱うようになった。1871年には彼の息子たちとともに「Thomas Cook & Son」社を設立した。1872年に、世界一周団体旅行を始めた(リバプール→ニューヨーク→サンフランシスコ→日本→中国→シンガポール→インド→(スエズ運河)→イギリス)。1873年には『Thomas Cook Continental Time Table』(トーマスクック・ヨーロッパ鉄道時刻表)を発刊した。1874年には、トラベラーズチェックの取り扱いも開始した。

1928年にクック家の所有から離れ、その後1948年、1972年と所有権が移転し、1992年にはドイツのランデス銀行の傘下となるが、1995年に再び買収される。1999年の合併でJMC (John Mason Cook) となった。2001年、ドイツのルフトハンザ航空と流通大手カールシュタット・クヴェレとの合弁事業として持分50対50で設立された「C&Nトゥーリスティック」(C&N Touristik AG) に買収され、トラベレックスにトラベラーズチェック事業を含む金融部門を売却。

その後、親会社のC&Nトゥーリスティック自身の社名変更により、「Thomas Cook AG」となった。2006年末、ルフトハンザが持分を合弁事業相手のカールシュタット・クヴェレに売却しカールシュタット・クヴェレ全株子会社となった。カールシュタット・クヴェレは2007年7月にアーカンドル (Arcandor AG) に社名変更。Thomas Cook AGは、2007年7月19日にマイトラベル・グループ(英: MyTravel Group plc)を吸収合併することにより(マイトラベル・グループの持っていた各旅行ブランドは、トーマスクックの各旅行ブランドに吸収される形で消滅)、現在に続く「トーマス・クック・グループ(Thomas Cook Group plc.)」が設立された

トーマス・クック・グループの設立を受けてロンドン証券取引所に上場、その後2009年にアーカンドルは破産申請し、トーマスクックの株式を売却したため、再びイギリスをグループの本拠とする、現在の形となった。なお、トーマス・クック単体(Thomas Cook Retail Ltd)の登記上の本店所在地がピーターバラに置かれているが、同地はかつての本社の所在地である。現在でも、メディア対応はピーターバラで行われている

現在、世界17カ国に拠点を持ち(旅行部門17カ国、航空部門6カ国)、世界有数のレジャートラベルグループに成長している。ツアーオペレーター、トーマス・クック航空、旅行代理業、ホテルなど、旅行におけるさまざまな分野で幅広いネットワークを保持する。イギリスに加えて、ドイツ、フランス、北欧、北米を主要5拠点としている。2012年にグループのCEOとなったハリエット・グリーンは、オンライン販売の拡大や店舗数の整理などの経営改革を進め、グループの財務状況を改善させた。この経営改革を通じて、出版業からは撤退した。2014年にハリエット・グリーンは辞任し、以降はスイス出身のピーター・ファンコーサーがCEOを務めている。

2019年に発生したヨーロッパ諸国の熱波やブレグジットに起因する海外旅行需要の減少、またオンライン予約の普及により再び経営が悪化。2019年8月には復星国際グループから延べ9億ポンドの支援を受ける内容で一度は債権者の合意を取り付けたが、その後なお2億ポンドの資金が必要となることが明らかになったため再建を断念し、9月23日ロンドンの裁判所に破産申請を行った。 現在同社のツアーで旅行中の、15万人以上の帰国のために、イギリス政府は無償で『マッターホルン作戦』と名付けた「平時では最大規模の帰国作戦」を開始した。

 

 

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