社会

令和4年7月8日に奈良市内において実施された安倍晋三元内閣総理大臣に係る警護についての検証及び警 護の見直しに関する報告書|警察庁

安倍晋三

 

警護警備に関する検証・見直しについて|警察庁 令和4年(2022年)8月25日公表

 

出典:警察庁

警察庁、臨時の全国警察本部長会議を開催 震災以来

 

 

【全文】奈良県警 鬼塚本部長会見 “職を辞して責任取るべき”

安倍元総理大臣が銃撃され死亡した事件で警察庁の検証結果が公表されたことを受け、辞職の意向を表明した奈良県警察本部の鬼塚友章本部長の会見の全文です。

冒頭コメント全文

奈良県警本部長の鬼塚でございます。本日はお集まりいただきまして、ありがとうございます。

改めまして、本年7月8日、県下、近鉄大和西大寺駅北側ロータリー付近にて選挙演説中であった安倍元内閣総理大臣が銃撃され、お亡くなりになられたことに対しまして、哀悼の誠をささげますとともに、ご遺族をはじめ多くの関係者の方々に対し、衷心よりお悔やみを申し上げます。
また、このたびの事案により、県民、国民の皆さま方をはじめ国内外の多くの方々にも、多大なるご不安、ご心配をおかけすることとなり、心よりおわび申し上げます。

このたびの事案は、奈良市内居住の男41歳が、第26回参議院議員通常選挙の応援演説のため当県を訪れていた警護対象者でございました、安倍元内閣総理大臣を手製の拳銃のような物を発砲し、殺害したものであります。

当県警として、所要の体制を確立し、警護警備を実施していた最中に発生したものであり、県下の治安責任を有する警察本部長として、重大かつ深刻な事態を招いたことに対し、責任を痛感しているところであります。事態の重大さに鑑み、国家公安委員会および警察庁長官に対して辞職を願い出ましたところ、本日ご承認を頂いたところであります。

本事案発生以降、国家公安委員会および警察庁において、検証、見直しが行われ、本日、警護予測の体制をはじめとする警護の強化方策が取りまとめられたものと承知しております。本事案を防ぐことができなかったことを猛省し、このたび示された諸対策を直ちにかつ着実に実践しながら、新たな警護体制を構築していくことを奈良県警察としてお誓い申し上げます。

私からは以上であります。

質疑応答

(質問)辞職に至った思いをより詳しく教えて下さい。
(鬼塚本部長)
7月8日の事案発生以来、私自身、個人的に敬愛する安倍元内閣総理大臣がお亡くなりになったとの知らせを受けて、私自身、計りきれない衝撃と責任の重さに押しつぶされそうになる毎日でありました。
その間、辞職の決断に一切の迷いやしゅん巡がなかったわけではありませんが、冒頭、申し上げたとおり、事態の重大さに鑑み、職を辞して責任を取るべきであると判断するに至ったわけです。

(質問)「迷いやしゅん巡」の意味について教えて下さい。
(鬼塚本部長)
7月の9日だったと記憶しておりますが、その時点において、事案の解明と警護上の問題を確認し、立て直していくことが私の責任であり、県民、国民の皆様に対する責任であり、多くの関係者の方々、ご遺族の方々、なによりもお亡くなりになられた安倍元内閣総理大臣に対する最大の弔いであり、責任であるとも申し上げました。
当然ながら、家族もおりますし、辞職をすることが全てにおいて責任を果たすことになるのかという点についても深く考えましたが、私自身の責任の取り方として、このタイミングを区切りとして、職を辞して責任をとることが最良の判断であると考えるに至ったわけであります。

(質問)3点うかがいます。
まず、辞任を決めたのはいつごろでしょうか。
次に、警護の最大の問題はどういったものでしょうか。
最後に、辞任されたあと鬼塚本部長はどうされるのか。
以上、3点について伺います。
(鬼塚本部長)
まず決断の時期というご質問に関しては、時期について正確に申し上げることは大変困難ではありますが、事案発生以来、深く考え、悩み苦しみながらも、家族をはじめ支えてくれる方に相談をいたしまして、繰り返しになりますが、事案の重大さと深刻さ、管轄責任を有する警察本部長としてこれより責任をとるべき道はないと考えた次第であります。

警護上の問題点、最大の要因については、すでに警察庁から発表された検証見直しの報告書の中に記載されているとおり、被疑者の背後からの接近を許してしまったことに尽きるわけですが、その要因の詳細についてはすでに報告書に記載され内容も公表されておりますので、そのとおり理解いただければと思います。

3点目の今後のことにつきましては、本日まだ、辞職の承認を頂きましたが、発令の日付は8月30日となっておりますので、まだ5日、やらなければならない仕事も残っており、本部長として責任を持ってそれを済ませた上で、家族の待つ東京に戻ってゆっくり考えたいと思います。

(質問)今回、辞職をもって責任をとられるということですが、具体的にどこに責任を感じていますか。
また、(以前の警護)計画を踏襲させてしまったことについては、どう考えていますか。
(鬼塚本部長)
今回の警護上の責任において大きく、現場における警護の問題と警護計画上の問題が指摘されておりますが、警護計画、承認したことはもちろんのこと、県下において行われていた、奈良県警の責任において行われていた警護上生じた深刻かつ重大な結果に対して、管轄責任を有する本部長として責任をとるということであります。

計画の作成自身については結果的に踏襲との記載があり、それもそのとおりではありますが、通常計画を作成するにあたっては以前の計画を参照するのもまた当然のことではあると考えています。問題は、その時々の警護に与える各種の影響を十分に考慮できていたかどうか。今回、当該警護計画書の作成にあたっては、その点は十分ではなかったと評価されており、私自身もそのように理解しております。

(質問)警察庁から検証結果が発表されましたが、奈良県警として改めて、当日の警護体制を教えて下さい。
(鬼塚本部長)
今回警護に関しましては、すでにご案内のとおり所要の体制で警護にあたっており、現場には10数名の警護員を含む警察官が配置されて、警護にあたっていたことでございます。その後、検証の過程において、私自身も含めて検察庁の検証チームの聴取を受け、関係の書類を全て提出し、県警で把握した内容も含めて、すべて警察庁に報告をした上で今回の検証見直し報告書が作成されておりますので、いま申し上げたような点についてもすべて公表された報告書の中に反映されているものと理解しております。

(質問)本部長として2度と同じことが起こらないように、「今後こういうところに留意してほしい」などの思いはありますか。
(鬼塚本部長)
見直しについては報告書の中にもございますし、その問題を発生させた当県警としては、それ以上にさらにしっかりとやっていかなければならないと思いますが、およそ警護活動というのは国の民主主義社会の根幹を支える極めて重要な警察活動でありますので、改めてそのことを胸に刻んで、二度とこのようなことが起こらないようにしていかなければならない。

会見終了後

鬼塚本部長は会見終了後、おもむろに席を立ち上がり、以下のように述べたあと、深々と頭を下げました。

(鬼塚本部長)
皆さま、本当にありがとうございました。
力及ばずこれで県警を去ることになりますが、奈良県警は必ず信頼を取り戻して、県民の国民の皆様のお役に立てるように歯を食いしばってやっていきますので、ぜひ応援をよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

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【詳細】安倍元首相銃撃 なぜ防げなかった 警察庁の検証結果は(NHK)

安倍元総理大臣が演説中に銃撃されて死亡した事件を受け、警察庁は当日の警備について計画に不備があった上、現場の指揮や情報共有も不十分で容疑者の接近に気付けず重大な結果を招いたなどとする警備の検証結果をまとめました。警護の基本事項などを定めた「警護要則」をおよそ30年ぶりに刷新して警察庁の関与を強めるなど、要人警護の運用について抜本的に見直す方針です。

安倍晋三

先月8日、奈良市で演説中に安倍元総理大臣が背後から銃で撃たれて死亡した事件を受け、警察庁は襲撃を未然に防げなかった当時の警備について検証結果をまとめ、25日公表しました。
報告書は、およそ40ページにわたって当時の警備について検証した結果をまとめています。

それによりますと、重大な結果を招いた最大の問題は、元総理大臣の後方の警戒が不十分で容疑者の接近を許したことだと指摘し、その要因として演説の直前に警察官の配置が変更され前方の警戒に重点が置かれることになりながら情報共有されなかった上、手薄になった後方を警戒する警察官を補強するなどの指揮がとられなかったことなどを挙げています。

現場の問題1 “後方からの接近に気付かず”

なぜ襲撃を阻止することができなかったのか。
報告書では現場の警備の問題点を挙げています。
今回の事件では安倍元総理大臣に対し2回銃が発射されていて、1回目の発射までに容疑者の接近を阻止していれば襲撃を防げたとしています。
ただ、元総理大臣の後方の警戒に空白が生じたことで現場にいたすべての警察官が容疑者の接近に気付くことができませんでした。
ここに最大の問題があったとしています。

安倍晋三

元総理大臣が演説を行った場所はガードレールで囲まれ当初SPを含む3人の警察官がその内側で警戒していましたが、演説直前にガードレールの外側にいた1人の警察官が内側に入り配置が変更されました。
この時、前方の聴衆が増えたことなどから警戒の重点が前方に移りましたが、こうした変更が現場の警察官どうしで情報共有されていなかった上、現場の責任者だった幹部も手薄になった後方を警戒する要員を補強するなどの指揮を取らなかったことで、隙が生まれたのです。

事件発生の直前に、一時、後方に注意を向ける機会がありました。
元総理大臣の真後ろを台車を押した男性や自転車が横切ったのです。
ただ、警察官たちはそうした動きに気を取られ目で追っていたため容疑者の接近を見落として、襲撃を許す結果となりました。

現場の問題2 “発射後の対応”

その後、容疑者が接近し銃を構えますが、いずれの警察官も認識していなかった上、1回目の発射音を銃によるものだと即座に認識していなかったといいます。

安倍晋三

容疑者は、1回目の発射後に元総理大臣までおよそ5メートルの距離から2回目の発射をしていますが、至近距離からの発射を許した時点で、警察官が襲撃を阻止することは物理的に不可能だったとしています。

また1回目と2回目の発射の間にはおよそ2.7秒ありましたが、この間に安倍元総理を演台から降ろし伏せさせるといった措置は取られませんでした。

もし1回目の発射の際に状況をすぐに理解し防護板を掲げたり避難させるなどの措置を取れば、襲撃を阻止することができたかもしれないと分析しています。

元総理大臣からいちばん近いおよそ2メートルの距離にいた警視庁のSPについても前方を見ていたため後方からの容疑者の接近に気がつかず、すぐに銃撃を受けたと理解できなかったため対応が困難だったとしています。

警察庁は、今後の対策として、「銃の発射音」を聞き分けるための研修などを全国の警察に対し行っていくことを検討するとしています。

計画の問題1 “安易な前例踏襲”

警察庁は、後方の警戒に隙ができた要因として「警護・警備計画」の問題についても指摘しています。
今回演説が行われた同じ場所では、6月25日に自民党の茂木幹事長による街頭演説が行われていました。
しかし奈良県警はこの時の警護を安易に踏襲していて具体的な危険性については検討していませんでした。

計画の問題2 “組織的な危険性の認識が欠如”

安倍晋三

現場はバスのロータリーがあるほか、多数の車両や歩行者が行き交い警護上の問題点がありましたが、後方の警戒は警察官1人で行うことになっていて危険性の認識が組織的になかったとしています。

また、奈良県警は警戒の重点を多くの聴衆が集まることによる不審者の飛び出しなどに置いていて、後方での不測の事態の対応を想定していなかったことも計画に不備につながったと指摘しています。

結果として、奈良県警本部長まで決裁を経たのにもかかわらず不備がある警護・警備計画が作成されたのは、その過程で必要な検討や指摘を組織的に行っていなかったことが原因だと総括しています。

警察庁の関与強めるなど 要人警護の抜本的見直しへ

「警護・警備計画」について、警察庁はこれまで地元の警察に作成を委ねていたほか、総理大臣や国賓などを除き事前の報告を受けておらず、危険性などを判断する仕組みになっていなかったとしてこれを改めるとしています。

具体的には警護の基本事項などを定めた「警護要則」をおよそ30年ぶりに刷新し、「警護・警備計画」の基準を示して地元の警察がこの基準に従って計画を作成できるようにしたうえで、警察庁が「警護・警備計画」の報告を受け修正点などを指摘できる仕組みを導入するとしています。

このほか、上空から状況を把握するためのドローンの活用や要人の周囲への防弾ガラスの設置など、新たな資機材も導入することにしていて、要人警護の運用について抜本的に見直す方針です。

元警視総監 “終わりではなく始まり”

警察庁警備局長などを歴任した米村敏朗元警視総監は検証結果について「事実関係を正確に把握し問題点を率直に述べている点で評価できる。前例踏襲を繰り返す中で、ある種の慣れが生じており計画策定の段階で拳銃の発砲といった最悪の事態を想像し準備することができておらず、やはり失敗だったと言わざるをえない」としています。

また「現場で警察官たちがマニュアルなどを参照しながら警護にあたるわけではなく、現場で判断を行う指揮官の存在が非常に重要になる。ただ今回はその役割が極めて不十分でそうした人材の育成がこれからの大きな課題だ」と指摘しました。

そのうえで「今回の検証と見直しをして終わりではなく、これからが始まりになると思う。今後行われる警護をさらに検証し見直していくという不断の作業が必要になっていく」と述べました。

警察庁 中村格長官が辞意

警察庁の中村格長官は25日の会見で、安倍元総理大臣が演説中に銃撃されて死亡した事件を受け「警護のあり方を抜本的に見直し、2度とこのような事態が起こることのないよう新たな体制で新たな警護を行うために人心一新を図る」と述べ、国家公安委員会に辞職を願い出たことを明らかにしました。

中村長官の辞任は26日の閣議で了解される見通しです。

中村長官は1986年(昭和61)に警察庁に入り、警視庁の刑事部長を歴任するなど主に事件捜査や組織犯罪対策に携わり、去年9月から長官を務めていました。

奈良県警 鬼塚友章本部長が辞意

奈良県警察本部の鬼塚友章本部長は25日、奈良県警察本部で会見を行い「県民や国民の皆さまに多大なる不安や心配をおかけすることとなり心よりおわび申し上げます」と述べました。

また「警察本部長として重大かつ深刻な事態を招いたことに対し、責任を痛感しているところであります。事態の重大さに鑑み、国家公安委員会および警察庁長官に対して、辞職を願い出ましたところ本日、承認をいただいた」と述べました。(NHK202208251732)

 

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