気象・災害

宮城県 最大級の津波想定公表 浸水面積は東日本大震災の約1.2倍

宮城県 津波

 

気仙沼市に県内最大となる22.2メートル

宮城県は10日、太平洋側の大規模地震で最大クラスの津波が発生した場合の浸水想定を公表した。

東日本大震災後にかさ上げした市街地や浸水しなかった場所が一部浸水域に含まれる。

沿岸15市町で震災の約1.2倍に当たる計391平方キロが浸水。気仙沼市に県内最大となる22.2メートルの高さの津波が到達するとしている。

既に福島県、岩手県がそれぞれ公表しており、東北の被災3県の想定が出そろった。

岩手県は宮古市に最大29.5メートル、福島県は相馬市に最大22.4メートルの津波を想定。両県はかさ上げ地が浸水するかどうか把握していないとしているが、浸水の範囲は震災を上回る。(共同)

 

 

津波浸水想定の設定公表について:宮城県

津波浸水想定に係るシェープデータ公開について - 宮城県公式ウェブサイト
津波浸水想定に係るシェープデータ公開について - 宮城県公式ウェブサイト

www.pref.miyagi.jp

 

 

NHK報道

宮城県内で考えられる最大クラスの津波の想定が公表されました。
浸水する面積は東日本大震災のおよそ1.2倍に上り、震災後に整備された住宅地や避難所、市役所や町役場も浸水区域に含まれます。
津波対策を大幅に見直す地域も出てきそうです。

津波の新しい浸水想定は、県が国の法律にもとづいて設定し、10日、自治体の防災担当者を集めた会議で公表しました。

東日本大震災と同じ「東北地方太平洋沖」と「日本海溝」「千島海溝」で起きる3つの巨大地震について津波のシミュレーションを行い、それぞれの想定結果の中で最も規模が大きいものを地域ごとに選びました。

また、防潮堤が壊れ、満潮の時間帯に発生するなど、悪い条件が重なった場合を考慮して津波の高さや浸水の範囲を設定しました。

それによりますと、浸水する面積は震災発生時の1.19倍にあたる391平方キロメートルに上ります。

津波の高さは、
▽気仙沼市の本吉町道外付近で22.2メートル
▽女川町の海岸通り付近で20.7メートル
▽石巻市の雄勝町雄勝上雄勝で19.6メートル
▽山元町の坂元浜付近で14.9メートル
▽仙台市の若林区井土須賀付近で10.3メートルなどと、
各地で10メートル以上の津波が来るとされています。

津波の到達時間は最も早い気仙沼市の場合、地震発生から21分後に1メートル以上の第1波が到達し、41分で20メートル以上の最大波になるとされています。

これらの想定では、震災後にかさ上げして整備された住宅地や、避難所に指定されている公共施設、沿岸の市と町の6割にあたる9つの市役所や町役場が浸水区域に入るため、津波対策を大幅に見直す地域も出てきそうです。

県は、新しい想定をホームページで公開して備えを呼びかけるとともに、沿岸の市や町に避難所や避難ルートの見直しなどを検討するように促すことにしています。

 

浸水する面積 市町別では

宮城県が公表した津波の新たな浸水想定では、県内で浸水する面積はあわせて391平方キロメートルで、東日本大震災の時のおよそ1.19倍とされています。

▽市町別で最も浸水する面積が広いとされているのは石巻市で、東日本大震災の1.16倍となる84.9平方キロメートルでした。
次いで、
▽仙台市が震災の1.03倍の53.8平方キロメートル、
▽東松島市が震災の1.33倍の49.2平方キロメートル、
▽亘理町が震災の1.2倍の42平方キロメートル、
▽名取市が震災の1.13倍の30.5平方キロメートル、
▽岩沼市が震災の0.99倍の28.8平方キロメートル、
▽山元町が震災の1.12倍の26.8平方キロメートル、
▽気仙沼市が震災の1.42倍の25.6平方キロメートル、
▽南三陸町が震災の1.38倍の13.8平方キロメートル、
▽多賀城市が震災の1.87倍の11.2平方キロメートル、
▽女川町が震災の2.07倍の6.2平方キロメートル、
▽松島町が震災の3倍の6平方キロメートル、
▽七ヶ浜町が震災の1.16倍の5.8平方キロメートル、
▽塩釜市が震災の0.97倍の5.8平方キロメートル、
▽利府町が震災の1.2倍の0.6平方キロメートルと、
岩沼市と塩釜市以外は震災を上回る面積となっています。

 

津波の想定は

宮城県が公表した津波の想定で、
▽最も高いとされるのは、気仙沼市の本吉町道外付近で22.2メートルです。

このほかの市と町で予想される、津波の最大の高さです。
▽南三陸町の戸倉長須賀付近で21.2メートル、
▽女川町の海岸通り付近で20.7メートル、
▽石巻市雄勝町の雄勝上雄勝付近で19.6メートル、
▽山元町の坂元浜付近で14.9メートル、
▽亘理町の吉田砂浜付近で11.5メートル、
▽岩沼市の早股前川付近で11.3メートル、
▽名取市の下増田屋敷付近で10.7メートル、
▽東松島市の宮戸観音山付近で10.6メートル、
▽仙台市若林区の井土須賀付近で10.3メートル、
▽七ヶ浜町の菖蒲田浜長砂付近で10メートル、
▽多賀城市の栄付近で8.6メートル、
▽利府町の赤沼櫃ケ沢付近で5メートル、
▽塩釜市の新浜町付近で4.8メートル、
▽松島町の松島大沢平付近で4.7メートルとなっています。

 

新しい想定の考え方

公表された新しい想定は、発生頻度は極めて低いものの、甚大な被害をもたらす最大クラスの津波、いわゆる「レベル2」の津波が起きた場合を考慮したものです。

震災後に整備された防潮堤や堤防は、それよりも規模が小さい「レベル1」の津波を想定して造られているため「レベル2」の津波は防ぎきれません。

沿岸部や低い場所からの確実な避難が求められます。

また、今回の想定は、
▽地震で地盤が沈下する、
▽満潮の時間帯である、
▽防潮堤は津波が乗り越えて壊れるといった、
悪い条件が重なった場合の浸水の範囲と深さを示しています。

実際にこうした条件が重なることは極めてまれだと考えられるものの、県はあらゆる可能性を念頭に対策をとっておくことで、東日本大震災のような想定外の被害を防ぎたいとしています。

さらに、県は地盤沈下の状況や地面の凹凸、建物の影響で、場所によっては想定よりさらに浸水規模が大きくなる可能性もあるとしています。

 

かさ上げ工事行われた場所でも浸水区域に入る場所が

公表された浸水想定では、東日本大震災のあと津波対策としてかさ上げ工事が行われた住宅地でも浸水区域に入る場所があります。

震災後に最大5メートルかさ上げして町を整備した気仙沼市鹿折地区では、高いところで5メートル以上10メートル未満の浸水が想定されています。

南気仙沼地区や魚町地区と南町地区など、気仙沼市中心部のかさ上げされた住宅地も高いところで5メートル以上10メートル未満の浸水が想定されています。

石巻市では震災後に区画整理をして新たに盛り土をした13か所すべてが浸水区域に入っていて、このうち新門脇地区では高いところで5メートル以上10メートル未満の浸水が想定されています。

このほか、震災後に最大5メートルかさ上げして整備された名取市閖上地区の高いところで3メートル以上5メートル未満、集団移転先として2メートルほどかさ上げして整備された岩沼市玉浦西地区で1メートル以上3メートル未満の浸水が想定されています。

 

今村所長「想定結果からどう検討できるのか話し合ってほしい」

津波の浸水想定に関する検討会の座長を務めた東北大学災害科学国際研究所の今村文彦所長は、10日開かれた県と沿岸市町の会議に出席したあと、浸水想定の目的について報道陣に説明しました。

今村所長は、「被災自治体では復興が進んでいるので、安全なはずの地域に影響が出るという結果はショックだと思う。ただ、3.11を経験した私たちはあの災害が最悪だと思っているが、われわれの経験だけで判断してはいけない」と述べました。

そのうえで、今後できることとして、「今回の想定結果を確認してどういう検討ができるのか、住民や関係する人たちで話し合ってほしい。東日本大震災以降、避難計画の見直しなどは行われていると思うが、今回の評価を受けて、それよりもう一段階、高い目標を立ててもらいたい」と話していました。

 

県の原子力防災担当者は…

宮城県が発表した最大クラスの津波の浸水範囲は、女川原発で事故が起きた場合の避難ルートにも及んでいます。

これについて、県原子力安全対策課の八鍬政信原子力防災対策専門監は、「危険性が高い避難ルートについては、それぞれの市と町で見直しも含めた検討を進めてほしい。県としても市や町と意見交換を重ねて支援方法を考えていきたい」と話しました。

住民の対応については、「屋内に避難することで、被ばくのリスクを一定程度避けられるので、まずは津波からの避難を優先し、避難所に移動してほしい。陸路での避難が難しい場合は、波が落ち着いた時点で海路で避難できるように、国などと調整を図りたい」と話していました。

 

新庁舎が浸水区域に含まれた女川町は

東日本大震災で役場が被災した宮城県女川町では高台に新たな町役場を建設しましたが、今回の想定ではその役場も浸水区域に含まれました。

町は災害時の代わりの拠点を探すなど対応に追われています。

女川町は、東日本大震災で海から300メートルほどの場所にあった役場が被災したため、地上20メートルの高台に新たな庁舎を建設し、4年前に完成しました。

しかし、今回の想定では新庁舎も敷地の大部分が3メートル以上5メートル未満の浸水区域となり、最も水位が高いところでは庁舎の2階近くまで浸水するおそれもあります。

防災を担当する企画課の阿部豊課長は「1000年に1度と言われた東日本大震災を超える想定に困惑している」と話しています。

災害が起きた時、町役場の2階に災害対策本部が置かれ、職員が参集するほか、避難所ではないものの住民が自主的に避難することもあります。

このため町では、津波警報などが出たときは予想される津波の高さに応じて住民や職員を避難させることや、災害対策本部などの拠点機能を別の施設に移転させることを検討しています。

一方、女川町は震災後、被害を免れた地域の山を切り崩すなどして新たな住宅地を作りましたが、その一部も浸水が想定されました。

阿部課長は「県からの詳細の情報を確認したうえで、地域防災計画や防災マップを改訂するなど住民に避難方法の周知をしていく」としています。

NHK:202205101843)

 

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