北海道・三陸沖後発地震注意情報の解説|内閣府
1.日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震とは?
房総半島東方沖から三陸海岸の東方沖を経て択捉島の東方沖までの日本海溝・千島海溝周辺では、これまでモーメントマグニチュード(Mw)7〜9の様々な規模の地震が多数発生しています。
2011年に発生した東北地方太平洋沖地震や1896年の明治三陸地震、869年の貞観地震など、巨大な津波を伴う地震が繰り返し発生しています。
国では、東日本大震災の教訓を踏まえ、最新の科学的知見に基づく最大クラスの地震・津波を想定し、今後起こり得る日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震の被害を推計しています。
想定される被害は、死者数が日本海溝沿いの巨大地震で最大約19万9千人、千島海溝沿いの巨大地震で最大約10万人と甚大なものですが、早期避難等の防災対策を行うことにより、被害を低減することができます。
日本海溝・千島海溝沿いの領域では、突発的に地震が発生した場合を想定し、次のような日頃から事前の防災対策を徹底し、巨大地震に備えることが重要です。特に積雪寒冷地域において通常の防災対策に加えて留意すべき対策を青字で示しています。
日頃から実施しておく防災対応の例
2.北海道・三陸沖後発地震注意情報とは?
日本海溝・千島海溝沿いの領域では、モーメントマグニチュード(Mw)7クラスの地震が発生した後に、更に大きなMw8クラス以上の大規模な地震が発生した事例なども確認されており(下図前例①及び②)、今後も同様の事象が発生する可能性があります。(※先に発生した地震を先発地震、これ以降に引き続いて発生する地震を後発地震と呼びます。)
実際に後発地震が発生する確率は、世界の事例を踏まえても百回に1回程度と低いものの、発生した場合には北海道から千葉県にかけての広い範囲で甚大な被害が想定されます。
巨大地震が発生した際の甚大な被害を少しでも軽減するため、日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震の想定震源域とその周辺でMw7以上の地震が発生した場合には、「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を発信し、大地震の発生可能性が平時よりも相対的に高まっているとして、後発地震への注意を促すこととなりました。令和4年12月より運用開始を予定しています。
情報が発信された際には、北海道から千葉県にかけての太平洋側で、日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震で強い揺れや高い津波が想定される地域にお住いの方は、後発地震の発生に備えた防災対応をとりましょう。
【情報の留意事項】
・「北海道・三陸沖後発地震注意情報」は、後発地震の発生可能性が平時よりも相対的に高まっていることをお知らせするものであり、情報が発信されたら後発地震が必ず発生するというものではありません。
・先発地震を伴わず、大規模地震が突発的に発生する可能性があります。
・情報発信の対象とする地震の発生エリア(北海道の根室沖から岩手県の三陸沖)の外側でも、先発地震が発生した周辺では、大規模地震が発生する可能性があります。
・すでに発生した先発地震への対応と後発地震に備えた対応を混同しないようにすることが必要です。
過去の後発巨大地震の発生事例
3.北海道・三陸沖後発地震注意情報はどのように発信されるの?
「北海道・三陸沖後発地震注意情報」は、日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震の想定震源域とそれに影響を与える外側のエリアでモーメントマグニチュード(Mw)7以上の地震(先発地震)が発生した場合に発信されます。
情報発信の流れは、先発地震による震度や津波の大きさにより大きく変わりますが、典型的な事例は下図の流れになります。
詳細については、後日ガイドラインを公表する予定です。
【先発地震による震度が大きい場合や予想される津波が高い場合】
【先発地震による震度が小さく(観測されず)、予想される津波が低い(予想されない)場合】
地震発生後の流れのイメージ
4.防災対応は何をすればいいの?
北海道・三陸沖後発地震注意情報が発信された際の防災対応についての、基本的な考え方は以下のとおりです。
・先発の地震も含め、突発的に地震が発生した場合を想定し、日頃から地震への備え(事前防災対策)を徹底しましょう。その上で、「北海道・三陸沖後発地震注意情報」発信時には地震への備えを再確認しましょう。
・情報発信時は、社会経済活動を継続した上で必要な防災対応を実施してください。国や自治体からの事前避難のよびかけはしません。
・情報発信時に地震が起こらなかった場合でも、「空振り」と捉えるのではなく、防災訓練や防災意識の向上につなげる「素振り」と捉えましょう。
この考え方を踏まえ、北海道・三陸沖後発地震注意情報発信時の住民の防災対応の例は以下のとおりです。
情報が発信された場合は、1週間程度、平時よりも巨大地震の発生に注意し、地震への備えを徹底しましょう。
具体的には、
・家具の固定や安全な避難場所・避難経路の確認などの、日頃からの地震への備えの再確認に加え、
・すぐに逃げられる服装での就寝や、非常持出品を常に携帯しておくなど、揺れを感じたり、津波警報が発表されたりした際に、直ちに津波から避難できる体制の準備、
・先発地震の被害状況に応じて、揺れによる倒壊や土砂災害等のリスクから身の安全を確保する備えをしましょう。
詳細については、後日ガイドラインを公表予定です。
巨大地震がほぼ確実に発生!? 周知不十分で「後発地震注意情報」が大きな誤解招く可能性浮上
気象庁は16日から新たに「北海道・三陸沖後発地震注意情報」の運用を始めましたが、住民に情報の名前や内容が十分に浸透していないため、早くも大きな課題が浮かび上がっています。
北海道から岩手県にかけての太平洋沖の想定震源域でマグニチュード7程度以上の地震が発生した場合、気象庁はさらにマグニチュード8クラス以上の巨大地震が発生する可能性に注意を促す「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を発表します。
対象となる北海道から千葉県の182の市町村では、住民に対し1週間、ただちに避難できる態勢をとることなどが呼びかけられますが、『事前』の避難の呼びかけは行われません。
この新しい情報はどれくらい理解されているのか。気象庁は11月下旬、公式ツイッターを使い、この情報が発表された場合に巨大地震が発生する可能性についてクイズ形式で尋ねました。
「1週間以内にマグニチュード8.0以上の大きな地震は、どのくらいの割合で発生するでしょうか」
4つの答えのうち、正解はDの「約100回に1回」ですが、最も多く選ばれたのはAの「ほぼ確実に発生する」で、37%に上りました。
2番目に多い「約半分」、つまり“およそ2回に1回”と答えた人とあわせると、実に6割以上が巨大な地震の発生を高い確率で予測する情報だと大きく誤解していることになります。
気象庁にも衝撃が走りました。
気象庁 地震火山技術・調査課 束田進也 課長
「これは決して地震予知の情報ではございません。しかも、出されたことによって必ず地震が起きるというものではありません。確率としては非常に低い情報」
ところが今月中旬、気象庁が再び公式ツイッターで同じクイズを実施したところ、「ほぼ確実に発生する」と答えた人の割合がわずかに増えていました。
政府・地震調査委員会委員長 平田直 東京大学名誉教授
「その領域でいつ地震が起きるのかは、現在の地震学では言うことができません。(いつ起きるかはわからないが)普段に比べると発生確度が増加するので、これは地震学的には確率としては高くなっている」
情報の中身や名前が最終的に決定したのは今年9月で、住民への周知が十分に行われないまま運用が始まった面は否めません。
この情報が発表される頻度について、気象庁は過去の例から「およそ2年に1回」と試算しています。
情報の第1号が発表されるまでに誤解は解消されるでしょうか。(TBS202212171843)
北海道・三陸沖後発地震注意情報 16日から運用 発表なら備えを|NHK
北海道から岩手県にかけての沖合にある「千島海溝」と「日本海溝」でマグニチュード7クラスの地震が起きた場合に、国がその後の巨大地震の発生に注意を呼びかける「北海道・三陸沖後発地震注意情報」の運用が16日正午から始まります。
情報が発表された場合、北海道から関東にかけての7道県182の市町村では、1週間程度は日常の生活を維持しつつ、揺れを感じたら直ちに避難できるよう備えておくことなどが求められます。
※「北海道・三陸沖後発地震注意情報」の情報が発信されたときに防災対応が求められる自治体は、北海道と東北、関東の7つの道県の182市町村です。182市町村を記事の後段に掲載しています。
その後の巨大地震の発生に注意を呼びかける新たな情報
情報の運用は16日正午から始まり、3メートル以上の津波や震度6弱以上の揺れなどが想定されている北海道と青森県、岩手県、宮城県、福島県それに茨城県と千葉県の、太平洋側を中心とした182市町村が対象です。
情報が発表されても住民に事前の避難などは呼びかけず、▽発表から1週間程度は日常の生活を維持しつつ、▽津波が想定されるなど迅速な避難が必要な場合にはすぐ行動できるよう備えておくことなどを求めるとしています。
また、企業や地域に対しては▽津波や土砂災害のおそれのある場所での作業を控えるほか▽地域に住む高齢者への声かけや連絡手段を改めて確認するなどとしています。
内閣府と気象庁は北海道や東北の沖合や沿岸部では地震活動が活発で、情報の発表は2年に1回程度となる見込みだとしています。
内閣府は「千島海溝や日本海溝では巨大地震の発生が切迫している可能性が高いとされ、1人でも多くの人命を救うために情報の運用を始めます。情報が出されたとしても巨大地震が必ず発生するとは限りませんが、住民が適切な行動をとれるように周知に努めていきます」と話しています。
発表された場合、どうすれば?
原則として事前の避難は必要ありません。
ただ、発表から1週間程度は日常の生活を維持しつつ、津波が想定されるなど迅速な避難が必要な場合にはすぐ行動できるよう備えておくことが求められています。
また、震度6弱以上の揺れが想定される地域では▽土砂崩れの危険性が高まっている場所にはできるだけ近づかない、▽津波の浸水想定区域に立ち入る場合はいつでも避難できるようにしておくことが必要です。
▽ハザードマップで危険な場所を確認する、▽避難経路などをチェックして家族との連絡手段や集合場所を決める、▽タンスや本棚などの転倒防止対策をとる、▽水や食料といった備蓄品の賞味期限を確認する、▽簡易トイレや携帯ラジオを準備する、▽持病があるなど個人の状況に応じて必要となる薬を準備するなど国は情報が発表された際はもちろん日頃の備えを再確認するよう呼びかけます。
企業も安全対策の確認を
▽利用客や従業員の避難経路や避難誘導の手順を確認する、▽病院や高齢者がいる施設では、高い階に移動するなどより安全な場所で過ごす、▽津波や土砂災害のおそれのある場所での作業、道路の通行を控える、▽勤務地の災害リスクが高い場合にはテレワークを活用する、▽機械や設備の転倒防止対策を確認する、▽重要な情報をバックアップし場所をわけて保存する、▽非常用発電設備と備蓄用の燃料を確認する、▽自治体との災害時の協定の内容を確認するなどです。
いままでの注意呼びかけとどう違う?
一方、気象庁はふだん、震度5強以上の揺れが観測された際や津波警報や注意報などを発表した場合に、地震から1時間後をめどに記者会見を開くなどしてその後の地震への注意を呼びかけています。
場合によっては気象庁などから2度の“注意呼びかけ”が行われることになりますが、これらはどう違うのでしょうか?気象庁によりますと最初の地震からおよそ1時間後をめどに開かれる記者会見では「1週間程度は同程度の規模の強い揺れを伴う地震が起きる可能性がある」として家具の転倒防止や停電対策、ハザードマップで地域の危険な場所や避難場所の確認をするほか、万が一に備えた非常持ち出し袋の準備などを呼びかけます。
一方、「北海道・三陸沖後発地震注意情報」では、同程度の規模ではなく、「より規模の大きい巨大地震が起きる可能性がある」と気象庁に加えて内閣府が一緒になって注意と防災対応を呼びかけます。
現在の科学では地震の発生を予知することはできず、『巨大地震が必ず起きるとは限らない』ということもあり、国は事前の避難は呼びかけないとしています。
過去にも巨大地震と大津波
国が想定している「千島海溝」の巨大地震は北海道の択捉島沖から十勝地方の沖合にかけての領域で起きる地震を指します。
ここでは海側の太平洋プレートが陸側に沈み込んでいてその境目では過去、▽1952年(昭和27年)の「十勝沖地震(マグニチュード8.2)」や▽1973年(昭和48年)の「根室半島沖地震(マグニチュード7.4)」などマグニチュード7クラスやマグニチュード8前半の津波を伴う地震が相次いで発生しました。
さらに、津波によって運ばれた土砂など「津波堆積物」の調査から17世紀にはこれらの領域が一度にずれ動くような巨大地震が起き、東日本大震災のような高い津波が押し寄せたと考えられています。
過去およそ6500年分の調査の結果、こうした規模の巨大地震は300年から400年の間隔で発生したと考えられ、前回からすでに400年程度が経過していることから、政府の地震調査委員会は「大津波をもたらす巨大地震の発生が切迫している可能性が高い」としています。
2011年の東日本大震災をもたらした巨大地震では南側の東北や茨城県にかけての領域が一気にずれ動きました。
一方、国は北海道の南の日高沖から岩手県の三陸沖にかけての領域でも津波堆積物の調査から17世紀や、12~13世紀など、300年から400年に一度大津波を伴う巨大地震が発生していたことがわかったとしています。
これらの領域では17世紀の地震を最後にこうした規模の巨大地震は発生していないとして、国の検討会は、「最大クラスの津波の発生が切迫している」と指摘しています。
ただ、巨大地震の実像はわかっていないことも多く、国は東日本大震災を受けて現状の科学的な知見をベースに最大クラスの地震や津波を想定しています。
国の被害想定 最悪の場合死者は10万~19万9000人
最悪の場合、死者は10万人から19万9000人に達し、津波から逃れても低体温症となって死亡する危険性もあるとしています。
建物は▽津波で約7万7000棟、▽火災で約3100棟、▽揺れによる倒壊が約1700棟▽液状化で約1600棟などとあわせて約8万4000棟が全壊するとしています。
被害が想定されている地域では冬は厳しい寒さとなります。
津波から逃れたものの屋外で長時間過ごすなどして低体温症になり、命の危険にさらされるおそれのある人が▽日本海溝で4万2000人、▽千島海溝で2万2000人に達するとしています。
具体的には▽浸水域にいるすべての人が地震から10分ほどで避難を始めるとともに、▽津波避難タワーやビルの指定、▽防寒機能を備えた避難施設の整備、▽低体温症を防ぐための乾いた衣類や暖房器具などの備蓄、▽避難路の凍結や積雪対策などをとることで、死者の数をおおむね8割減らすことができるとしています。
港湾施設の対応は?
その結果、青森港では津波警報が発表された際には事業者に対して一律に避難を求める指針を設けていますが、今回の情報で1週間にわたる制限をかけると経済活動に及ぼす影響が大きいなどとして避難について新たな指針を設けず各社それぞれの基準で対応することになりました。
専門家「空振りの可能性高いが準備で被害を少なくできる」
国の検討会で座長を務め、情報の内容や伝え方について議論を続けてきた東京大学大学院の片田敏孝特任教授は「巨大地震につながる可能性は100回に1回あるやなしやという非常に不確かな情報であることは事実で、ほとんどの場合、空振りになってしまう可能性が高い。一方、大きな津波を伴う地震が発生する可能性が相対的に高まっているのも間違いなく、そうした状況を知らせる情報だ」と話しています。
その上で片田教授は、情報が出された際に受け取る側の行動によって被害の回避や軽減につながると指摘します。
片田教授は東日本大震災では巨大地震が起きる2日前にマグニチュード7.3の地震が起きていたことを例に「寝るときには近くに非常持ち出し品や靴を置くとか避難経路の確認、避難生活の準備などをしておけば、万が一、地震が起きたときに被害を少なくできる。自分や家族の命を守るための情報として主体的な姿勢で対応してもらえれば、地域の安全性を高めることにもつながると理解してほしい」と話しています。
防災対応が求められる自治体 7道県の182市町村
北海道
網走市、帯広市、釧路市、伊達市、苫小牧市、根室市、登別市、函館市、北斗市、室蘭市、
足寄町、厚岸町、厚真町、池田町、浦河町、浦幌町、枝幸町、えりも町、雄武町、長万部町、音更町、上士幌町、木古内町、釧路町、様似町、鹿追町、鹿部町、標茶町、標津町、士幌町、清水町、白老町、白糠町、知内町、新得町、新ひだか町、壮瞥町、大樹町、弟子屈町、洞爺湖町、豊浦町、豊頃町、中札内村、中標津町、七飯町、新冠町、浜中町、日高町、平取町、広尾町、福島町、別海町、本別町、幕別町、松前町、むかわ町、芽室町、森町、八雲町、羅臼町、陸別町、
更別村、鶴居村です。
青森県
青森市、五所川原市、つがる市、十和田市、八戸市、三沢市、むつ市、
鯵ヶ沢町、今別町、おいらせ町、大間町、五戸町、 七戸町、外ヶ浜町、東北町、中泊町、南部町、野辺地町、階上町、平内町、深浦町、横浜町、六戸町、
風間浦村、佐井村、東通村、蓬田村、六ヶ所村です。
岩手県
一関市、奥州市、大船渡市、釜石市、北上市、久慈市、遠野市、花巻市、宮古市、盛岡市、陸前高田市、
岩泉町、大槌町、金ケ崎町、紫波町、住田町、平泉町、洋野町、矢巾町、山田町、
田野畑村、野田村、普代村です。
宮城県
福島県
いわき市、相馬市、南相馬市、
大熊町、新地町、富岡町、浪江町、楢葉町、広野町、双葉町です。
茨城県
鹿嶋市、神栖市、北茨城市、高萩市、日立市、ひたちなか市、鉾田市、
大洗町、
東海村です。
千葉県
旭市、いすみ市、大網白里市、勝浦市、山武市、匝瑳市、館山市、銚子市、
一宮町、御宿町、九十九里町、白子町、横芝光町、
長生村です。
(NHK202212151854)
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