地震 電力

苫東厚真発電所の全面復旧は11月以降に

Hokkaido Electric Power

北海道電力苫東厚真発電所

 

世耕経済産業大臣「苫東厚真火力発電所の復旧は11月以降」

世耕経済産業大臣は11日の閣議後の記者会見で、地震の影響で運転が停止している北海道最大の火力発電所、苫東厚真火力発電所の復旧について、1号機が9月末以降、全面的な復旧は11月以降にずれ込むという見通しを示しました。

その上で北海道内の節電要請について、少なくとも週内は20%の節電目標を求めるとしました。

北海道内の節電要請の見通しについて、苫東厚真火力発電所の復旧が遅れる一方、別の水力発電所の稼働などが見込まれるとしたうえで「京極揚水発電所の2号機の稼働が今週14日に予定されているが、その14日までは2割の節電目標に協力していただく必要がある。今週14日以降は、節電の動向を踏まえ、入念に打ち合わせて方針を決めたい」と述べました。

また、菅内閣官房長官は「京極揚水発電所2号機の稼働まで、電力需給は綱渡りの状態だ。14日までに節電2割の目標の達成を実現しつつ、あわせて節電の動向等も踏まえ、その後の目標については検討する」としました。

 

 

苫東厚真発電所の現状と復旧見通し

設備

主な損傷状況・補修予定

復旧見通し

1 号 機

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ボイラー設備

【復旧に最も期間を要すると予想する作業】

・ボイラーの内部点検の結果、ボイラー管 2 本の損傷を 確認

・損傷管の取替ならびにその後の健全性を確認する 水圧試験を実施予定(9 月 16 日の週)

9 月末 以降

タービン設備

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・今のところ運転再開に影響する損傷は確認していない

その他

・今のところ運転再開に影響する損傷は確認していない

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2 号 機

ボイラー設備

【復旧に最も期間を要すると予想する作業】

・ボイラーの内部点検の結果、ボイラー管 11 本の損傷 を確認

・損傷管の取替ならびにその後の健全性を確認する 水圧試験を実施予定(9 月 16 日の週)

10 月中旬 以降

タービン設備

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・今のところ運転再開に影響する損傷は確認していない

その他

・今のところ運転再開に影響する損傷は確認していない

4 号 機

ボイラー設備

・冷却を継続していたボイラー本体は、9 月 10 日から 内部点検を開始し、今のところ運転再開に影響する損 傷は確認していない

・点検後、健全性を確認する水圧試験を実施予定 (9 月 16 日の週)

11 月 以降

タービン設備

【復旧に最も期間を要すると予想する作業】

・タービンの冷却が終わり次第、点検を行う予定 (9 月 16 日の週)

→点検のためには、タービンを分解・組み立てする必要があること から、作業期間に相当の時間を要する見込み

・外部点検では、今のところ運転再開に影響する損傷は 確認していない

その他

・今のところ運転再開に影響する損傷は確認していない

 

北海道電力 阪井副社長記者会見にての説明

1号機については、これまでの点検により、ボイラー管2本に損傷を確認しました。現在、これらの管の修繕を実施するとともに、他の損傷箇所の有無を確認中です。その結果にもよりますが、現時点での復旧見通しは9月末以降になると考えています。

次に、2号機の状況ですが、これまでの点検により、ボイラー管11本に損傷を確 認しました。現在、これらの管の修繕を実施するとともに、他の損傷箇所の有無を確 認中です。その確認を終えていない範囲が1号機よりも多いことから、現時点での復 旧見通しは、1号機よりももう少し遅い10月中旬以降になると考えています。

最後に、4号機ですが、先端部で火災のあったタービンについてです。お配りした 添付資料(※編注:下記掲載の添付資料2)の右側の小さな写真のように、通常は緑色のカバーがかかっており、そ の中に600度の蒸気が入ることでタービンを回しています。今回、それを開放して点検を行うわけですが、高温の蒸気により、まだタービンの 温度が高い状態であるため、十分な点検が出来ていない状況で、タービン付近での出火も確認していることから、分解・組み立てに相当の時間を要する見込みであり、現 時点での復旧見通しは11月以降になると考えています。

 

北海道電力提供)

 

 

電力供給の見通し

資源エネルギー庁によると、地震の影響で北海道内ではピーク時の電力需要に対する供給力の不足が率にしておよそ10%、37万キロワット程度あるとされています。

供給力の今後の見通しについて北海道電力は、当初の予定を前倒しして今月13日に主にピーク時に使う「揚水発電所」の京極水力発電所の1号機を再稼働し、最大20万キロワットの発電が可能になるとしたほか、今月14日には京極水力発電所の2号機が再稼働して、最大20万キロワットの発電が可能になり、合わせて最大40万キロワットが増える見通しを示しました。

これによって、他の発電所のトラブルや需要の増加がなければ、今月14日以降はピーク時の供給力不足の状態は一定程度、解消できるめどがたったといえ、さらに、停止している北海道内最大の火力発電所、苫東厚真火力発電所も今月末以降に3つある発電施設のうち、出力35万キロワットの1号機が復旧する見通しです。このため、京極水力発電所や苫東厚真火力発電所の1号機の再稼働が順調に進めば、早ければ10月には供給力は一段と改善するものと予想されています。

 

冬の電力需要|前年度の冬季最大電力使用量は1月に525万kWを記録

2017年度の冬のピーク時電力使用量は、2018年1月25日の525万kWでした。また、東日本大震災の直前、2011年1月12日には557万kWを記録しています。

そして、北海道では昨年実績で、10月の最大電力需要は423万kW、11月は467万kW、12月は512万kWのピーク時電力量となっています。

水力としては最大の発電能力を持つ京極発電所2基が13~14日に稼働し、10月末には知内、苫小牧の計2基の火力発電所の運転再開のめどが立っています。

この4基が順調に稼働すれば、11月までに苫東厚真4号機(70万kW)を上回る計100万kW分の電力を生み出すことができ、さらに10月からの液化天然ガス(LNG)火力発電所1号機(小樽市、約57万kW)の試運転で生じる電力も、家庭や企業向けの供給に活用する方向で調整しています。

苫東厚真1・2号機が10月末までに復旧し、現在の供給力に他の火力発電所の再稼働分の電力を加えると、供給力は単純計算で548万kWまで回復することになります。しかし、最も被害が深刻な苫東厚真4号機の復旧が遅れるほど電力需給は逼迫の度合いを高める可能性があります。

現在の供給電力には、他社の水力やバイオマスのほか、新日鉄住金や日本製紙など企業が保有する自家発電設備50万kWが含まれているということも重要な要素です。

 

老朽化設備の故障リスク 奈井江火力発電所の稼働は半世紀前

今回の非常事態に、10月に予定されていた北海道ガスの石狩液化天然ガス(LNG)火力発電所が経済産業省の要請もあり、1カ月前倒して9月8日に稼働、急遽送電を開始しました。加えて、今後、LNG小樽(試運転で生じる電力)、北電及び他社の水力発電約80カ所と今回の発災後に停止しているものや定期点検中だった火力発電所も稼働させる予定ですが、奈井江火力(35万kW)の1968年を筆頭に、苫小牧(25万kW)1973年、砂川(25万kW)1977年、伊達(70万kW)1978年、音別(14.8万kW)1978年、森(2.5万kW)1982年、知内(70万kW)1983年と古いものでは半世紀、いずれも35年以上が経っており、安定した発電にはなお不透明で、老朽化設備の故障リスクは決して低いものではありません。

そして9月11日、釧路市の音別発電所2号機がガスタービンの振動上昇により14時16分自動停止、直ちに同所1号機を起動させて供給量低下を回避する事態が発生しました。北海道電力は2号機の停止原因について、調査中としています。

 

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